2017年10月02日

固い豆、柔らかい豆。





コーヒーの焙煎をやっておりますと、

生豆の固さの違いが焙煎プロセスに影響することがあります。




生豆の固さは、「密度」と同じと考えて頂くと分かりやすく、

固い生豆は密度が高く、柔らかい豆は密度が低いのです。




この生豆の密度に影響する原因の一つは

農園の「標高の高さ」にあります。



標高が高いと固く(高密度)なり、

標高が低いと柔らかく(低密度)になるのです。



これは同じ品種でも同じです。



そして、標高が高いと高密度になる理由は、

気温の寒暖差が大きくなることにあります。




ワタクシも産地へ行った時に驚いたのは

赤道付近の農園では、常に昼は30℃以上で

朝晩は、なんと10℃〜15℃に冷え込みます。



毛布なしでは眠れません!!



よく考えたら、2000mクラスの標高にある農園は

鳥取の大山(1900m)より高い場所にあって、

グアテマラやコロンビアでは3000mクラスの農園もあります。




毎日、毎日、この20℃近い気温差が発生する

標高の高い特別なコーヒー農園では

コーヒーチェリーがある”行動”を起こします。



一気に冷える気温を感じ、

命の危機ととらえて”糖分”を蓄えます。



そして成長スピードが遅くなり

”固く引き締まる”(高密度化)という現象を起こします。




ちなみに、お米や野菜やフルーツでも

同じような現象が起こります。



そして、標高が低くて寒暖差の少ない土地では

コーヒーチェリーの成長は早く(低密度化)

糖分も貯めこみません。





もう、お分かりだと思いますが、

コーヒーの生豆は固いほど良い豆で

柔らかいほど低級品となるのです。




そして、糖分を豊富に含んだコーヒーには

素晴らしい甘味が生まれると同時に、

糖分をエネルギーとして発生する

成長クエン酸サイクルによって

クエン酸やリンゴ酸を豊富に蓄えて行きます。



そうです、

標高が高い農園で育った

高密度で良質なコーヒーには、

”甘味と良質な酸味”が豊富にあるのです。





さらに高密度な生豆は

様々なミネラル分を吸収してゆき

その土地のテロワールと相まって

「素晴らしいフレーバー」を生成します。






これが、決定的な品質の差となり、

コーヒーのおいしさを作る大きな要素となります。




あとは、施肥、選定、選別、処理、乾燥、などで

液体の透明感や、質感、余韻などを構成してゆきます。



トータルで、おいしいコーヒーになるには

たくさんの要素が必要なのですが、

ザックリいくと固い豆と柔らかい豆の差があります。






コーヒーの焙煎をする上で「固い豆」は焙煎が難しいです。



水分の抜け方、火の入り方、膨らみ方、香りの出かた。


全ての工程が難しいです。



高品質なコーヒーは押しなべて「固い」ので、

浅煎りから中煎りの焙煎で失敗しやすく、

生焼けによる、渋みや、スッパ味が出たり、

火力がキツイため表面焼けした、穀物臭や

後味のザラツキが出ることがあります。





高品質な生豆を、適切においしくローストするためには、

適切な排気バランスにおいて、

程良い強めの火力での水分抜きと

ハイパワーでのロースティング(本焙煎工程)と

蓄熱や余熱を利用した柔らかい熱でのデベロップメント(味作り工程)

が必要になって、実は生豆ごとに少しづつ違うアプローチになります。





しっかりフレーバーを出して、

良質な酸味と甘みをバランス良く残す。





これが理想の焙煎です。





自慢じゃございませんが、

ワタクシも散々失敗してきました。




丁寧に育てられた最高級の豆を、

未熟な焙煎で台無しにしてきました。



眠れない夜もありました。

食事ものどに通らない日もありました。




でも、あきらめませんでした。




焙煎やカッピングを学べる機会があれば

借金してでも行っております。



そうやって、

すこしづつ、理想の焙煎に近づいてゆきます。





ある人が言いました。

「上手に焙煎出来た時って、コーヒーが花開くよね。」




そうなんです、

固い豆ほど、その個性をなかなか発揮せず閉じこもりがちですが、

花開いた時の、たとえようもないフレーバーや明るい果実感は

ようやくエベレストに登頂したような、

ようやく9秒台を出したような、

ようやく10s減量したような、

そんな達成感をもたらしてくれます。






ワタクシの焼くコーヒーたちも

以前よりは花開いてくれております。



そんな時は、やはり焙煎士冥利につきます。





なかなか振り向いてくれなかったあの子が

やっと微笑んでくれたような気持ち。





ぜひ今後とも見守ってくださいませ。




posted by 大地の実 at 18:31| 珈琲豆のこと