2013年12月07日

奇跡のコーヒー。〜豆記世界編・4〜







みなさんは青森のリンゴ農家・木村秋則さんをご存知でしょうか?



映画にもなった「奇跡のリンゴ」の人と言えばお分かりかと思います。

数年前に書籍で読んだ時、全身が粟立つような興奮を感じた事を憶えています。








一般的に無農薬や自然農法と呼ばれるやり方にはリスクが伴います

害虫、病気、収穫量の減少など。





様々なリスクを乗り越えて生産される無農薬、自然栽培の物は

野菜でも、果実でも、お米でも、風味や甘みが増すのが特徴で、

素材が持っている本来の味を楽しむ事ができます。




エチオピア・イルガチェフェ地区のコーヒーは無農薬です。




それは日本に居る時から知っていましたし、

業界では有名な話です。




ただし、こんな形でイルガチェフェのコーヒーが作られていたなんて

思っていなかったので、僕は実際にこの目で見た時に、

全身が粟立つような興奮を体験しました。







エチオピア・イルガチェフェのコンガ農協に到着した我々は

お馴染みのコーヒーセレモニーでおもてなしを受けた後、

コーヒーの果肉を剥くウェットミルや乾燥させる所を見学しました。






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驚いた事に、シーズンのピークで600人近くの女性が

一斉にハンドピックで選別するという徹底ぶり。






彼らは「選別する」ことで品質が上がり、

売値が非常に良くなる事を知っています。







それは僕たち消費者にとっても良い事で

もっと、もっと、その事を知って欲しいのですが、

地元の中間業者が買い取る場合、品質よりも

低価格を望むので、カサ増しする為に選別しない

農協も多くあるのが現状。







特にイルガチェフェでは選別能力が発達していて

そのクオリティーがカップのクリーンさになって現れるのです。







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またコンガ農協では選別によってグレード分けします。


 ■ G−2 (グレード2)

  一般的な汎用品タイプの選別で未熟豆や欠点豆のややある。

 
 ■ G−1 (グレード1)
 
  非常に徹底した選別を行うロットで、通常オーダー制となり
  直接注文の場合のみG−1ロットを作る。



そして、ウォッシュドとナチュラルの両方どちらも可能となりますが

ウォッシュドの方が発酵せず、欠点豆の選別もやりやすい為に

どちらかといえば水洗式の方が高品質になるそうです!




恥ずかしながら、僕は初めて知りました。




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上の写真のような立派なウォッシィングステーションでは

一日6トンの加工が可能で、摘み取りから時間を置かずに

素早く加工する事もできます。




チェリーを摘み取ってから時間が経つと腐ってしまう事があり

風味を著しく損なう原因になります。





ちょうどこの日も、摘み取られたチェリーが運び込まれていて

明日の加工を待っていました。





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「このチェリーはどの辺りの農園から運ばれるんですか?」

という質問に



「農園?そんなものは無いよ。」





農園が無いというのはどういう事なのか。




「じゃあ、このコーヒーはどこで採れるの?」





「ほら。皆さんにも見えているでしょう。

 そこの山にある家が。そう。家の庭にある

 コーヒーの木から2000の家族が持ちよって

 イルガチェフェ・コンガのコーヒーになります。」





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良く見れば周りの山には小さな家の屋根が見えます。




もっと良く見れば遠くに山にも。



すごい数の家が点々と存在していました。





「ガーデンコーヒー」



そう呼ばれているコーヒーはおそらく世界にも

珍しいのではないでしょうか。






中国人強盗殺人事件の影響で滞在時間が

大幅に短縮されていましたが、無理を言って

僕たちはそのガーデンコーヒーのある家に

お邪魔して実際にどんな風にあるのか見せてもらいました。




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普通の民家の裏に自生しているコーヒーの木から

完熟したチェリーを摘み取ります。








こんなにも、自然に。


本当に何もしてないの?。




そういう疑問が湧きあがります。



通常、他国もそうですがコーヒー栽培では

土壌作り、苗作り、木の選定、農薬のコントロールなど

さまざまなカテゴリーでノウハウがあり、品質に直結します。



それが世界の常識でした。



なぜならば、現代のコーヒーは人間が品種改良を繰り返し

作り上げたコーヒーだからです。




「実をたくさん付ける、甘味を増す」などの効果が上がっていますが

しかしそれは病気に弱くなったり、害虫に弱くなったりしました。





コーヒー栽培の歴史は人間の歴史でもあり、

病気や害虫との戦いの歴史でもありました。









自然に自生するコーヒーから、

こんなにもたくさん実を付け、

尚且つ素晴らしく美味しいコーヒーになるなんて。







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本当にびっしりと実を付けたコーヒーの木。





完熟したチェリーを一粒取って

口の中へ入れてみました。




甘い!!!!!




なんという甘味!!!




果肉から溢れるような果汁には

チェリーというよりもイチジクや甘柿のような

強い、強い、甘味がありました。




僕が興奮した声を上げたのを合図に

そこらじゅうでコーヒーチェリーを食べ始めた日本人。





そして、それを不思議そうに眺めるエチオピア人。




現地では普通コーヒーチェリーは食べません。


食べられますが、実より種(豆)のほうが価値があって

お金になるから特に食べることはしないのが一般的。





美味しい!美味しい!



日本人に笑顔が溢れると不思議そうに見ていた

エチオピア人も嬉しそうに笑っていました。









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結局、色んな人が集まってきて

みんなでワイワイと賑やかで楽しい時間を過ごせたのです。




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僕たちは家の人に聞きました。


「肥料や剪定はするの?」


「特別な肥料はしないわ。剪定といえば

 高く伸び過ぎると摘みにくくなるから

 伸びたら上を切っちゃうのよ。

 この辺りは昔からバナナも良く育つし

 パパイヤも良く育つの。葉が落ちて

 自然と堆肥になるし、牛やヤギのフンも

 少し撒くくらいかな。」






奇跡のリンゴのことを思い出していました。





リンゴ農家の木村さんは無農薬、自然農法の為に

血のにじむような苦労をして地獄を味わいました。






でもそれは本来、自然そのものの姿に戻しただけで

すべての作物は最初から農薬や科学肥料が必要ではありませんでした。






ここイルガチェフェに育つコーヒーを見ていると

コーヒー本来の姿を見させてもらっているようで

とっても贅沢で掛け替えのない貴重な時間だったと

振りかえると思います。








そしてコーヒーだけでなく

「人間本来の姿」も見れました。





日本人として産まれ育った僕は人間として

彼らより”退化”してしまっていると感じました。



文明や科学の力で便利さや清潔な衛生環境で生活していると

便利で住みやすいですが、一方で、エチオピア人のような

溢れるようなエネルギー感は失われている気がしました。







僕の子供2人を現地に連れていくと

もしかしたら死んでしまうかもしれません。



そう感じるほど日本人は弱っていると感じました。




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そんなイルガチェフェ・コンガ農協ですが

見学だけでは物足りない我々、日本人軍団は

責任者にオーダーロットの交渉を開始しました。







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コンガ農協では先も説明したように

G−1グレードはオーダー制になっていて

G−1のなかでも選別のグレードがあります。




我々は、最も最高の選別方法でトップ・オブ・トップの

G−1をオーダーする事にしました。





そして交渉成立。






一緒に同行した仲間たちは殆どがコーヒー業者やロースターです。





一社ではコンテナ買いは厳しいですがみんなで買えば怖くない!!




共同で買い付けてみんなで分けようという事になり

アースベリーコーヒーも乗っかりました。




2014年の夏。



エチオピア・イルガチェフェ・コンガでの

スペシャルオーダーロット。




プレミアム・イルガチェフェ・コンガG−1を

皆さまにお届けできると思っています。





憧れの地イルガチェフェに訪問し

奇跡のようなコーヒーをこの目で見て、

最高品質の買い付けが出来るなんて

本当に夢のようです。




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僕たちは、イルガチェフェ滞在での熱気の中で

ぼんやりと夢見心地ながらも、再び10時間かけて

首都アジスアベバに戻り、現地のエクスポーターと

会合したりカッピングセッションしたりして過ごし

エチオピアを後にしました。





過酷だったかもしれません。


効率の悪いスケジュールだったかもしれません。


快適とは言い難い環境だったかもしれません。


生産地慣れしている方もエチオピアが一番きついと言います。




でも。




一生、忘れる事のない時間でした。



夢のエチオピア。



本当に素晴らしい国でした。



ありがとうエチオピアよ!





そして、次はルワンダへ。



エチオピアが人間本来の姿ならば、

ルワンダは人間が持つ”闇”の部分を経験した国でした。




20年前に起きた事件「ルワンダ・ジェノサイド」

この事を語らずにルワンダの事は語れません。




人間は時として”鬼”になってしまいます。

それは今も昔も変りなく、普遍的な人間の性質なのかもしれません。




僕自身、大きなショックを受けたルワンダの歴史と一緒に

お伝えします。




僕たちの旅はもう少し続きます。



もう少しだけお付き合い下さい。







つづく








posted by 大地の実 at 15:48| 豆記世界編2013DEC